知的財産権侵害の罰則及び対処方法 Vol.1

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ニュース 知的財産権侵害の罰則及び対処方法

人間の幅広い知的創造活動の成果について、その創作者に一定期間の権利保護を与えるようにしたのが知的財産権制度です。知的財産権は、様々な法律で保護されています。 種苗法違反の侵害につきましては別サイト:常緑キリンソウ.com にてまとめておりますので、ご覧ください。

知的財産権の種類

知的財産権には、特許権や著作権などの創作意欲の促進を目的とした「知的創造物についての権利」と、商標権や商号などの使用者の信用維持を目的とした「営業上の標識についての権利」に大別されます。また、特許権、実用新案権、意匠権、商標権及び育成者権については、客観的内容を同じくするものに対して排他的に支配できる「絶対的独占権」といわれています。

特許権とは

特許権は発明を保護するための権利です。発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、高度のものをいいます。特許発明とは特許されている発明をいいます。特許権を取得すると、自身の特許発明の実施を独占できると共に、第三者が無断でその特許発明を実施していればそれを排除することができます。

実用新案権とは

実用新案権は、物品の形状、構造または組み合わせに係る考案を保護するための権利です。考案とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいい、発明と違い高度であることを必要としません。登録実用新案とは実用新案登録を受けている考案をいいます。実用新案権は、実質的に無審査で取得でき早期に権利化することができるため、ライフサイクルの短い技術に関して有効です。ただし、第三者が無断でその登録実用新案を実施している場合、権利行使前に実用新案技術評価書を提示して警告を行なう必要があります。

意匠権とは

物、建築物、画像(以下、「物等」)のデザインに対して与えられる独占排他権です。意匠権として保護されるのは、物等の全体のデザインの他、部分的に特徴のあるデザイン等です。意匠権の効力は、登録された意匠と同一又は類似の範囲まで及びますので、第三者によるデザインの模倣品や類似品の販売等を排除することができます。権利期間は出願日から最長で25年(2020年3月31日以前の出願は登録から最長で20年)です。なお、物等のデザインは著作権で保護される場合もありますが、著作権は原則として絵画などの純粋美術が著作物として保護されるのに対し、意匠権は工業上利用できる物等のデザインが保護の対象となります。

商標権とは

商標権とは、商品又はサービスについて使用する商標に対して与えられる独占排他権で、その効力は同一の商標・指定商品等だけでなく、類似する範囲にも及びます。商標として保護されるのは、文字、図形、記号の他、立体的形状や音等も含まれます。権利の存続期間は10年ですが、存続期間は申請により更新することができます。

育成者権とは

育成者権は育成された品種(植物体そのもの)を保護するための権利です。品種とは、植物分類の下位の単位で、植物の実用的性質において他の集団と区別可能な遺伝的性質をもつ集団をいいます。(逐条解説種苗法)品種の育成者とは、交雑等の人為的変異及び突然変異等の自然的変異に係る特性を固定又は検定した者をいいます。育成者権を取得すると、自身の登録品種の利用を独占できると共に、第三者が無断でその登録品種を利用していればそれを排除することができます。私たちの身近なところに多くの育成者権が存在します。おいしい果物、鮮やかな色彩の花、耐寒性や耐病性に優れた米、健康成分をさらに増したお茶などに育成者権が与えられています。

育成者権侵害に対する罰則
常緑キリンソウニュース:育成者権侵害に対する罰則
常緑キリンソウニュース:育成者権侵害に対する罰則

育成者権者又は専用利用権者に無断で登録品種を利用した場合、育成者権を侵害したことになります。育成者権者等は、侵害者に対し、民事上、以下のことを請求できます。

◆侵害行為を止めること、侵害行為において作られた種苗、収穫物若しくは加工品の廃棄を 求めること等(差止請求)
◆損害の賠償を求めること(損害賠償請求)
◆信用の回復に必要な措置等を求めること(信用回復の措置請求)
 故意に育成者権を侵害した場合には、以下の刑事罰が科されます。
◆個人:10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金  
 又はこれらの併科(懲役と罰金の両方を科す)
◆法人:3億円以下の罰金

育成者権侵害行為の対応例(フロー図)
常緑キリンソウニュース:育成者権侵害行為の対応例(フロー図)
育成者権侵害行為の対応例(フロー図)

育成者権者は、育成者権の侵害者に対し、例えば、侵害行為を中止するような警告を発した上、まずは、侵害者との間で、損害や許諾等の話合い(示談)をする対応をとることができますし、最終的には、民事上の措置として、裁判所に対し、侵害行為の中止を求める差止、損害賠償、信用回復措置を請求する訴え(民事訴訟)を提起することが出来ます。また、育成者権者は、故意による侵害者に対しては、刑事上の措置として、刑事告訴をするといった対応を取る事が出来ます。

種苗法違反は刑事訴訟が基本

特許や著作権などど同様に、種苗も知的財産になりますが、他の知的財産権と比べて、権利侵害の証明が非常に難しいと言われています。また、実際の裁判の判例なども少なく、権利侵害を受けた場合の対処方法について書かれた物も非常に少なく、その対応に戸惑ってしまいます。民事訴訟では、証拠押収のために強制的に圃場に入ったりする事は出来ません。品種保護Gメンも、育成者権侵害対策に係る相談は受けてもらえますが、警察など国家権力ではありませんので強制捜査する権利はありません。育成者権をめぐって民事訴訟を起こすと「訴えた側が同一品種であることを証明しなくてはならず大変」です。一方刑事事件の場合は、警察が動いて立証する為に訴えた側の負担が少なくなります。刑事事件では、証拠押収のために強制捜査で圃場に入り、侵害品を押収する事が可能です。種苗法違反は、育成者権侵害行為の対応例(フロー図)の①刑事告訴~刑事裁判を基本に考えるてみる事も重要です。

育成者権侵害の罪は非親告罪

親告罪とは、被害者からの告訴がなければ検察が起訴(公訴の提起)をすることができない犯罪の種類を言います。つまり、捜査機関が単独で逮捕や捜査を進めることができない犯罪のことを言います。告訴とは、砕いて説明すると、被害者が「加害者に罰を与えてください」と、処罰を求めて警察などの捜査機関に申告することです。親告罪は被害者からの告訴がなければ検察は起訴できず、結果的に警察も加害者を逮捕し、捜査を進めることができないのです。育成者権侵害の罪は非親告罪であり、公訴の提起に被害者の告訴は不要です。つまり、育成者権の侵害を受けた被害者は、民事訴訟での裁判所の判断や告訴は必要とせず、捜査機関が、侵害情報をつかみ逮捕や捜査を進める事が出来ます。

刑事裁判の流れ(公判の流れ)(フロー図)
常緑キリンソウニュース:刑事裁判の流れ(公判の流れ) (フロー図)
刑事裁判の流れ(公判の流れ) (フロー図)

「公判」とは、「刑事訴訟」(刑事裁判)において、裁判所、検察官、被告人(弁護人)が訴訟行為を行うために法廷で行われる手続をいいます。裁判(公判)でどのようなことを行うのかフローに沿って見て行きたいと思います。平成26年度司法統計によれば,平成26年における「裁判を受けた人が有罪になる割合」は97%。「実体判決を受けた人が有罪になる割合」は99%程度となります。日本の刑事事件では、通常、捜査段階において慎重な捜査が行われ、決定的証拠の有無、被告人の証言の信用性、被告人の自白の信用性などを慎重に吟味した結果、裁判をするかどうかを判断しています。そして、検察において確実に有罪にできるとの結論とならない限り起訴されません。つまり、刑事裁判は慎重な操作により、プロの捜査官から見て有罪であることが間違いないと判断された場合に実施される手続であり、それ故、有罪率が極めて高いのです。(出典:刑事事件弁護士ナビ)

知的財産権侵害事案への対処
常緑キリンソウニュース:知的財産権侵害事案への対処 法廷の写真

鳥取地方裁判所にて刑事裁判継続中
平成30年わ第117号 種苗法違反事件 公判予定

2021年12月27日14:00~ 論告・求刑・最終弁論
2022年3月4日13:30~ 判決言渡し

常緑キリンソウにおきまして、育成者権の侵害があり、民事裁判、刑事裁判を経験しました。種苗法につきましては別サイト:常緑キリンソウ.com にてまとめておりますので、ご覧ください。


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