1 異常気象
気象庁では、「過去30年の気候に対して著しい偏りを示した天候」を異常気象と定義しています。世界気象機関では、「平均気温や降水量が平年より著しく偏り、その偏差が25年以上に1回しか起こらない程度の大きさの現象」を異常気象と定義しています。
近年、気温の上昇、大雨の頻度の増加や、農作物の品質低下、動植物の分布域の変化、熱中症リスクの増加など、気候変動及びその影響が全国各地で現れており、さらに今後、長期にわたり拡大するおそれがあります。2018年の夏、西日本の広範囲で発生した「平成30年7月豪雨」や、埼玉県で歴代全国1位の最高気温を更新するなどの記録的な猛暑に見舞われました。これらは、多くの犠牲者をもたらし、また、国民の生活、社会、経済に多大な被害を与えました。個々の気象現象と地球温暖化との関係を明確にすることは容易ではありませんが、今後、地球温暖化の進行に伴い、雨が降る場所でたくさん降ったら、その周りは逆に降りにくくなります。気象が極端化し、強い雨が増えることで弱い雨が降りにくくなり、結果として雨の日が減る現象につながります。乾燥、干ばつ、山火事、大雨、大雪など気象の二極化のリスクは更に高まることが予測されています。
地球の悲鳴でしょうか?
これまで屋上緑化で使用されてきた地被植物が、現在の異常気象においては屋上で生存できないほど過酷な環境に変化してきています。あと10年後には異常気象とは呼ばす、普通の事になっているのかもしれません。
「強靭な性質のセダムは、マンションや高層ビルの屋上緑化に適した植物として、近年注目を集めています。」
とうたっているサイトもいまだにあります。屋上の環境も変わってきたことを念頭に置き、植物に関する新しい情報を仕入れる必要があります。
2 屋上で使用する植物の問題点(地被植物・草花に関して)
(1)屋上の環境に合わない植物の選定
これまで屋上緑化で使用されてきた地被植物が、現在の異常気象においては屋上で生存できないほど過酷な環境に変化しています。植物の特性と現場の環境を詳しく調べましょう。
まずは、下記のポイントは必ず押さえておきましょう。
1.屋上の厳しい環境に適応できる植物選ぶ
2.生長の早すぎるものは避ける
3.手入れが簡単な植物を選ぶ
「屋上緑化に適した植物」・「屋上緑化で生育可能な植物」の例が役所の建物緑化の手引きやネットに書かれています。地被植物には、セダム類、タマリュウ、ヘデラ類、スナゴケなど。草花では、アジュガ、シバザクラ、ヤブラン、マリーゴールド、バーベナなど。と書かれている事が多いようです。しかし、本当にこれらの植物が屋上に適しているのでしょうか?
我々も仕様変更のきかない役所の屋上緑化工事で、アジュガの植栽を行ったことがあります。すぐに枯れると思っていましたが、工事完了3か月後には、上記写真のようにすっかり悲惨な状態になっていました。設計者もきちんと現場状況を調べた上で、その植物を採用する必要が有ります。また、これまで屋上緑化で使用されてきた地被植物が、現在の異常気象においては屋上で生存できないほど過酷な環境に変化しています。
セダム(Sedum)とは、ベンケイソウ科のマンネングサ属(学名:sedum属)に分類される多年草の多肉植物です。全世界に400種以上が存在するといわれます。別名「万年草」とか「弁慶草」とも呼ばれています。乾燥に大変強いことが特徴で、海岸や崖などのちょっとした吹きだまりなどほとんど土のない場所でも生育しているものをみかけます。耐乾性に富み、土壌厚や水分の確保が困難な条件下においても生育が可能な植物です。セダムは、CAM型と呼ばれる特殊な光合成を行います。これは、夜に気孔を開いて二酸化炭素を取り込み、リンゴ酸という物質に変化させて貯え、昼は気孔を閉じて貯えたリンゴ酸を使って光合成を行うというものです。この方式は、通常の光合成に比べ効率は落ちますが、蒸散による水の損失を少なくできるため、水の不足しがちな乾燥地や岩の上に生息する植物に適した方法です。繁茂しすぎると蒸れにより病気にかかりやすくなります。
英名 Mexican stonecrop
学名 Sedum mexicanum
科名属名 ベンケイソウ科セダム属(マンネングサ属)
性状 多年草/常緑/多肉性/匍匐性
大きさ 草丈:10~20cm/花径:7~10mm
花 5~6月に黄色い花が咲く
形態 茎は直立し、細くて尖った葉が密に着き、黄緑が鮮やか。
開花期には、高く伸びた花茎の先が伸び、かさ型に黄花が一 面に広がる。
原産地 不明
生育地 本州(関東地方)から九州に広がり野生している帰化植物。
道端、道路沿いの荒地、空地など
利用 屋上緑化、グランドカバー、花壇、鉢植え等。
その他 生育地:メキシコで栽培されたものが新種として記載された ものであって、
メキシコには自生せず、原産地は不明。
メキシコマンネングサは生育が早いが、セダムの中でも特に病気に弱い。
アルタナリア菌、フザリウム菌、ピシウム菌、菌核菌等による衰退が見られる。
英名 英名はありません
学名 Sedum uniflorum ssp. japonicum f. morimurae
科名属名 ベンケイソウ科セダム属(マンネングサ属)
性状 多年草/常緑/多肉性/匍匐性
大きさ 草丈:8~20cm
花 5~7月に黄色い花が咲く
形態 秋~春の期間、葉がオレンジ色に紅葉する。メノマンネングサの変種。
原産地
生育地 山地や海岸の岩上。帰化植物。
利用 屋上緑化、グランドカバー、花壇、鉢植え等。
その他 DNAを用いた解析でもメノマンネングサとモリムラマンネングサはほとんど同じ。
英名 Stringy stonecrop
学名 Sedum sarmentosum
科名属名 ベンケイソウ科セダム属(マンネングサ属)
性状 多年草/冬期はほとんど落葉/多肉性/匍匐性
大きさ 草丈:10cm/花径:10mm
花 5~6月に黄色い花が咲く
形態 葉は濃黄緑色で、長さ13~25mm、幅3~8mmの菱状狭楕円形で、鋭頭。
茎は紅色を帯び、伏して、つる状に伸び、長さ約30cmになる。
春~夏期に長く地上をはい成長力は特に旺盛である。
秋から冬期にかけては、落葉期なので一見枯れた外観を呈する。
原産地 東アジア(朝鮮半島・中国北部)
生育地 北海道から九州まで各地で野生している帰化植物。都市近郊に多く、
石垣や河原、崖地など。
利用 屋上緑化、グランドカバー、花壇、鉢植え等。
その他 韓国では食用に供しているともいわれる。
英名 Jenny’s Stonecrop
学名 Sedum reflexum
科名属名 ベンケイソウ科セダム属(マンネングサ属)
性状 多年草/常緑/多肉性/匍匐性
大きさ 草丈:10cm
花 6~8月に黄色い花が咲く
形態 葉は円柱状で一見針葉樹のような形をしており青緑の色合が特徴。
地面を這うように広がり30cmに達する。耐寒性に優れている。
原産地 ヨーロッパ中部~フィンランド
生育地 ヨーロッパ中部からノルウエー、フィンランドなど北欧まで分布する。
利用 屋上緑化、グランドカバー、花壇、鉢植え等。
その他 ドイツでの屋上緑化に多用される。
英名
学名 Sedum album cv. Coral Carpet
科名属名 ベンケイソウ科セダム属(マンネングサ属)
性状 多年草/常緑/多肉性/匍匐性
大きさ 草丈:5cm
花 6~8月に白色い花が咲く
形態 夏期は深い紫色を呈するが、冬期、あるいは乾燥条件の厳しい時などは
赤く変色する。
原産地 ヨーロッパ南部から西アジア、北アフリカなどに分布する。
生育地 ヨーロッパ南部から西アジア、北アフリカなどに分布する。
利用 屋上緑化、グランドカバー、花壇、鉢植え等。
その他 ドイツでの屋上緑化に多用される。Sedum album(アルブム)という
セダム品種のうちの一種である。
葉、花の形質によって多くの園芸品種がつくられている。
英名 Two-row stonecrop
学名 Sedum spurium
科名属名 ベンケイソウ科セダム属(マンネングサ属)
性状 多年草/半落葉/多肉性/匍匐性
大きさ 草丈:10~15cm/花径:15mm
花 7~8月に桃色の花が咲く(白、赤、赤紫などの品種もある)
形態 丸い葉が鋸歯のような形状をし、バラの花のように重なり、夏期は緑色。
土壌が乾燥気味であったり春・秋期などは赤紫色を示す。
冬期は落葉することが多く茎だけの姿になってしまうので、一見枯れたような
印象を受ける。
原産地 コーカサス北西部、アルメニア地方
生育地 コーカサス北西部、アルメニア地方
利用 屋上緑化、グランドカバー、花壇、鉢植え等。
その他 ドイツでの屋上緑化に多用される。北方地域で花着きが良い。
冬期 葉が濃紅色になる「コッシニュウム」、「ドラゴンズ・ブラッド」、ピンクと
クリームの斑が入る「トリカラー」などがある。
英名
学名 Sedum tetractinum
科名属名 ベンケイソウ科セダム属(マンネングサ属)
性状 多年草/常緑/多肉性/匍匐性
大きさ 草丈:15cm
花 5~7月に黄色い花が咲く
形態 肉厚の丸い葉で、葉が八重咲きの花のように見える。
秋~春にかけては紅葉し、葉が減少する。半日陰地を好む。
原産地 中国
生育地 山地の岩の上や石垣など
利用 屋上緑化、グランドカバー、花壇、鉢植え等。
英名 英名はありません
学名 Sedum uniflorum ssp. oryzifolium
科名属名 ベンケイソウ科セダム属(マンネングサ属)
性状 多年草/常緑/多肉性/匍匐性
大きさ 草丈:5~10cm/花径:5~10mm
花 5~7月に黄色い花が咲く
形態 葉は互生し、多肉質で緑色をしており円柱状楕円形~延長上倒卵形、円頭。
冬季あるいは乾燥条件がきびしいと葉は赤く変色する。
原産地 日本(関東地方以西、四国、九州、奄美大島)、朝鮮半島
生育地 海岸の岩場
利用 屋上緑化、グランドカバー、花壇、鉢植え等。
その他 和名は葉の形が南京米に似ていることを指す高知県柏島の方言からという説。
葉の形が11世紀頃に渡来した、長粒種の大唐米に似ていることからと言う説。
英名 英名はありません
学名 Sedum makinoi
科名属名 ベンケイソウ科セダム属(マンネングサ属)
性状 多年草/常緑/多肉性/匍匐性
大きさ 草丈:2~10cm/花径:10mm
花 5~7月に黄色い花が咲く
形態 緑色で茎は短く、葉は小さく丸い。マット状に生育する。
紅葉すると赤黄色になる。小型のロゼットで越冬する。
原産地 日本(本州~九州)
生育地 山地の岩の上や石垣など
利用 屋上緑化、グランドカバー、花壇、鉢植え等。
様々なセダムの写真(一連の4枚は同じ種類で時期による違い)
セダム(Sedum)とは、ベンケイソウ科のマンネングサ属(学名:sedum属)に分類される多年草の多肉植物です。全世界に400種以上が存在するといわれます。別名「万年草」とか「弁慶草」とも呼ばれています。
セダムが使用される「薄層型の屋上緑化」は、メンテナンスフリー的なイメージで日本でも急速に拡大しました。外来種のセダムには大きな欠点がありました。酷暑に強いはずのセダム緑化に枯損事故が発生することがあります。この現象はセダム緑化のもっとも怖い「蒸れ現象」です。セダムにとって日本の高温多湿はかなり厳しい環境です。セダム緑化を維持させるには、開花後に花枝を切り取ったり、除草の必要があります。雑草が繁茂するとセダムが被圧されて著しい生育不良を起こしてしまいます。また、意外ですが飢えた都会の鳩はセダムを食い荒らします。日本の都市では、セダムはメンテナンスフリーではありません。放置していると数年後には上記写真のような有様になってしまします。セダム緑化やコケ緑化であっても適切な手入れが不可欠です。
日本の都市では、セダムはメンテナンスフリーではありません。放置していると数年後には上記写真のような有様になってしまします。セダム緑化やコケ緑化であっても適切な手入れが不可欠です。
(2)屋上緑化システム(薄層緑化工法)で使用する植物選定のポイント
1.屋上の厳しい環境に適応できる(暑さに強い、乾燥に強い、風に強いなど)植物を選ぶ。
2.生長の早すぎるもの、風で折れたり、倒伏しやすいものは避ける。
3.手入れが簡単な植物、管理がしやすい植物を選ぶ。常緑種ならグッド!。
4.笹類や竹類は根張りが著しく、防根シートのわずかな隙間から侵入するため避ける。
5.実のなるものは鳥などによって種子が運ばれ、想定外の場所で広がる恐れがある。
6.建物の影響で日陰になる場所には、耐陰性の強い植物を選ぶ。
7.セダム類やコケ類は、緑地面積にカウントしない場合があるため自治体に確認する。
いろいろな現象に柔軟に対応できる植物を選ぶことが重要ですね。
3 屋上緑化システム(薄層緑化工法)の問題点
【薄層緑化とは?・・・屋上緑化軽量システム】
屋上緑化軽量システムは、荷重が60㎏/㎡以下で、土壌が薄く且つ軽量化された植生基盤が最大の特徴であり、使用できる植物が限定されます。昨今の異常気象による高温、大雨、強風などで「薄層型」の緑化において様々な問題が発生しています。
特別な設計がされた建物を除き、一般的に既存の建物に積載可能な荷重は地震を考慮して、住宅・事務所等は60㎏/㎡(床の構造としては180㎏/㎡)、デパート学校等は130㎏/㎡(床の構造としては300㎏/㎡)と法に定められています。屋上緑化軽量システムは、荷重が60㎏/㎡以下で、土壌が薄く且つ軽量化された植生基盤が最大の特徴であり、建築物の積載荷重制限に関係します。土壌が薄い「薄層型」では用いられる植物は、セダム、芝、コケ、地被類に限定されます。「薄層型」屋上緑化は平成8年に屋上緑化先進国のドイツから本格的に移入され、日本でも採用が急速に拡大しました。しかしながら、昨今の異常気象による高温、大雨、強風などで「薄層型」の緑化において様々な問題が発生しています。
(1)屋上緑化システムにおける雑草問題
春~秋にかけて温かいシーズンになると雑草は増えてきます。大きく分けると4種類の雑草があり、イネ科雑草と広葉雑草、一年生雑草と多年生雑草があります。屋上緑化では、オヒシバ、スズメノカタビラ、エノコログサ、メヒシバ、ノボロギク、オオイヌノフグリなどの雑草が見られます。また、植えていない植物が芽生えて生育することがよくあります。これは、鳥や風が種子を運んでくるからです。ちょっと除草をさぼってしまうと上記写真のような雑草に覆われた状態になってしまいます。
雑草に勝てますか?
雑草がいつの時代も無くならずに常に生え続けてくるのには3つの理由があります。
雑草は1つの株から2千粒~5万粒の種をまきます。多いものの中では50万粒の種を捲くこともあり、撒かれた種の中からおおよそ80%が発芽し、繁殖するため、雑草が増殖してしまう一つの要因になります。また、風によって流されたり、鳥が食べたものの中に種が紛れてフンとして排出されたり、と自然や動物の影響を受けて拡散されることもあるため、雑草が無くならない原因は多くあります。
次に、雑草は日光の光を栄養としていることが繁殖する理由の一つになります。雑草の多くは日の光を浴びることを条件として発芽します。屋上緑化の場所は、土壌が有り日光が豊富な場所ですので雑草が繁茂する環境がそろっています。
雑草が生えてくる最後の理由は、雑草の根が強いことにあります。雑草は根っこがあるだけで何度でも再生して生えてくるため、雑草自体を引っこ抜いても地下に根が残っていればまた繁殖し始めます。多年生雑草は、冬になれば一度枯れ地上から無くなりますが、暖かい時期になるにつれて急激に成長するため、毎年増殖します。これらの理由により、雑草は拡大しています。
(2)屋上緑化システムにおける土壌の流出問題
「時間降水量50㎜以上の「非常に激しい雨」はここ30年で約1.3倍に増加。時間降水量80㎜以上の「猛烈な雨」もここ30年で約1.7倍に増加。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次評価報告書によると、ほとんどの陸域では大雨の頻度が増加している。極端な高温、熱波や大雨の頻度は引き続き増加する可能性が非常に高い。」となっています。 *出典:株式会社ウェザーニューズ「最近の気象現象の変化について 気レX参2-1」
土の流出を防げますか?
屋上緑化で土が流出するケースが増えています。
気象レポートから分かるように、「非常に激しい雨」、「猛烈な雨」が増加しています。また、激しい風や突風も増えてきています。ますます屋上緑化にとっては厳しい環境となっています。屋上緑化軽量システムは、荷重が60㎏/㎡以下とする為に、土壌厚が薄く3~5cm程度しかありません。上記写真のように激しい雨や風によって土が流出するケースも増えています。土がなくなってしまっては、植物も生育できません。
土壌流出実験・土壌飛散実験をおこないました。
4 屋上緑化システム(薄層緑化工法)選定のポイント
1.屋上の厳しい環境に適応できる植物を選ぶ。常緑種ならグッド!。
2.雑草の侵入に対して対策が施してある製品を選ぶ。
3.風による土壌の飛散、雨による土壌流出に対策が施してある製品を選ぶ。
屋上緑化に関しましてご質問等ございましたらお気軽にお問い合わせください。
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